日常生活の注意点

関節リウマチと感染予防

監修:森ノ宮医療大学大学院保健医療学 教授
大阪大学大学院医学系研究科 招聘教授
冨田 哲也 先生

関節リウマチの患者さんは、治療中特に感染症に気をつける必要があります。
その理由をみていきましょう。

関節リウマチは感染するの?

関節リウマチは、自己免疫疾患のため感染する病気ではありません。関節リウマチの原因がほとんどわかっていなかったころにはさまざまな説があったようですが、現在では発症原因の研究も進み、感染する病気ではないことがわかっています。

関節リウマチではなぜ感染症にかかりやすくなるの?

関節リウマチは感染する病気ではありませんが、関節リウマチの患者さんが感染症にかからないように気をつける必要があります。なぜなら、関節リウマチの患者さんは、病気の進行や治療により外敵から身を守る自己免疫機能が低下することが多く、感染症にかかりやすいとされているからです。感染症は早期に適切な対応をしないと重症化してしまうこともあります。早期発見と予防を心がけましょう。

日々の生活に取り入れたい感染対策

手洗い・うがい1)

手洗い・うがいは、感染症予防の基本です。外から帰ってきたときはもちろん、食事の前、掃除の後などこまめに行うとよいでしょう。細菌やウイルスは目では見えませんので、手が汚れて見えなくても、手を洗う習慣をつけましょう。
特に手洗いは、意外と洗い残しがあることをご存知ですか? ここで、あらためて手洗い・うがいの方法をおさらいしてみましょう。

手洗いのポイント

  • 1. 手を流水で十分にぬらす。
  • 2. 石鹸を適量とり、よく泡立てる。
  • 3. 手のひら、指の間(手のひらからと手の甲から)、親指、爪、手首の順でよくすり合わせて洗う。
  • 4. 清潔なタオルで水気をよく拭き取る。

温めると関節の痛みがやわらぐとされていますので、冷たい水ではなく、お湯で洗うのもよいでしょう。
せっかく手を洗っても、タオルが衛生的でなければ意味がありません。ペーパータオルを使う、小さいタオルで毎回きれいなものを使う、タオルの使用後はよく乾かしておくなどの工夫をしましょう。
また、手洗いの後、アルコール消毒をするのもよいでしょう。消毒用アルコールを適量とり、手全体にのばして、完全に乾燥するまでよくすり合わせます。

うがいのポイント

手を洗った後は、うがいをしましょう。先に口をゆすぎ、口の中の汚れをきれいにした後で、喉のうがいを行うとよいでしょう。水道水でのうがいで十分効果があるとされていますが、うがい液などを利用するのもよいでしょう。

マスクの着用

マスクは、かぜなどをほかの人にうつさないために着用することが基本です。しかし、関節リウマチの患者さんのように、病気やお薬によって免疫機能が低下している方は、人ごみに出かけるときにはマスクを着用するようにしましょう。まずは、マスク自体が清潔であることが重要です。使い捨てのマスクは毎回新しいものに替えましょう。

ワクチンの予防接種

関節リウマチ治療では、インフルエンザや肺炎予防のために予防注射の接種を勧められることがあります。体調や服用されているお薬によって、接種が勧められる予防注射とそうでないものがありますので、どのような予防注射をいつ接種するかについてはかかりつけの医師とご相談ください。
しかし、予防接種を受ければ絶対に感染しないということではありませんので、感染予防の基本である手洗い・うがいは忘れずに行いましょう。

口腔ケア2)

口の中が不衛生になると歯周病にかかりやすくなります。歯周病は、痛みがほとんどなく、気がつかないうちに進行する歯の病気です。歯周病のある患者さんは、関節リウマチにかかりやすいことがわかっています。また、歯周病は細菌が増えることで進行するため、感染症のリスクも増加します。大切なことは、毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な歯科検診です。
関節に痛みを感じているときに歯磨きをするのが億劫になることや、磨いているつもりでも細かいところに磨き残しがあることがあります。関節の痛みが強い場合や手指の変形がある場合には、電動歯ブラシの使用や歯ブラシの柄の太さを調節するなど工夫し、口の中を清潔に保つようにしましょう。
口腔内が汚れていたり、それにより歯に異常をきたしたりしているときは使用できない薬があるので、治療に影響を及ぼさないためにも口腔ケアには気を使いましょう。

ストレスで感染症になる?

ストレスは、体力や免疫機能を低下させ、感染症にかかりやすくなる原因となることがわかっています。
予定を詰めすぎない、忙しい日が続いたら休みをとる、好きなことをしてリラックスするなど、心と身体が元気でいられるように予定を立てましょう。
忙しくてなかなか休めないときにも、深呼吸をする、温かい飲み物を飲むなどしてリラックスできる方法を見つけましょう。体調管理をして疲れをためないことは、関節リウマチと長くつき合っていく上でとても重要です。

体調の変化を感じたら

いくら感染症に気をつけていても、完全に予防することはできません。熱や咳、身体のだるさなど体調の変化を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。感染症は、早いうちに適切な対応を行うことが重要です。万が一に備えて、かかりつけの病院の連絡先を調べておきましょう。ご家族の方とも共有しておくと安心です。

  • 1)堀 賢編:感染対策実践マニュアル 3 じほう:109, 2017
  • 2)西井 美佳ほか:“第3章 3 リウマチ治療と口腔ケア” 最新知識と事例がいっぱいリウマチケア入門 神崎 初美ほか編 1 メディカ出版:137, 2017

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